注意ポイント
医療費明細の見方ってご存知ですか・・?
*いつもの記事よりこのカテゴリの記事は長いですよ・・?
こんな方におすすめ
- 最近入院したものの自己負担金額の根拠が良く分からない方
- 医療費決定の仕組みをざっくりと知りたい方
- 出会い頭に前回記事を読んでしまった方
前回お伝えした通り、私は今月の始めに盲腸で入院する事になりました。
筆者
盲腸になった時の記事
折角の医療系税理士(自称)なので、今回入院の医療費について簡単に解説を試みたいと思います。
筆者
ついに・・昨年からの目標であった「医療系の記事」を書くことができます・・。
今後、自分の中の活動と併せて時事ネタ的に医療業界に触れていく機会を増やしたいと思います。
まず、今回の入院を整理すると下図のようになります。
【本人的にはあっという間でしたが、4泊もしているのですね・・。ここ最近では最長の外泊かもです。】
2つの病院を受診し入院した流れに沿って「領収書・明細書の発行義務」「医療費の計算方法」「自己負担金額の決定方法」「負担軽減」について解説します。
Ⅰ.「領収書・明細書の発行義務」(病院A)
救急外来を受診し1泊入院した病院Aでは「医療費明細」を貰えませんでした。
筆者
よって、まずは医療費明細のルールについて言及します。
医療機関では、会計時に貰える証憑として「領収書」と「明細書」があります。
「領収書」は大まかな診療行為別(例えば検査、投薬・・といった区分)での記載があります。
【まあ・・さすがに領収書だけだと解説するのは難しいですよね・・。】
一方、「明細書」はもっと細かい診療行為別(例えば血液検査GOT、GPT・・など合計13項目以上・・といった区分)での記載があります。
筆者
・・まあ普通の人が見ても全く良く分かりませんが・・。
これらの交付義務については、ざっくり要約すると以下のとおりとなっています。
【明細書は発行しない医療機関もチラホラと見かけますが、どうせ見ても良く分からないし・・という感覚で特に気にも留めないわけです。】
筆者
・・医療機関が交付しなくてはならないのは「領収書」のみですね。明細書は・・要求すれば交付されたのですかね・・?
医療機関は「要求があれば交付する」旨の掲示もなくてはならず、発行手数料が1,000円以上の場合は具体的な理由も必要となるようなので医療機関側のハードルも高いですね。
筆者
私が通院する近隣の歯科医院は500円でした。500円程度が無償交付しない場合の相場かも知れません。
ちなみに、病院Aの医療費は次の病院B退院後に(妻が)貰ってきたのでした。
筆者
支払について柔軟に対応してくれたことには感謝です。
Ⅱ.(転院後)入院初日の医療費(B病院)
今回の急性虫垂炎は3泊4日でしたが、それでも外来よりは複雑な医療費計算となります。
筆者
概ね以下のスケジュールで入院生活を送った場合の明細書は添付のとおりでした。
step
11日目:昼過ぎに救急外来受診⇒診察・検査・画像診断⇒手術⇒入院
step
22日目:安静・昼から食事開始・夜には点滴抜去
step
33日目:入浴許可も出て終日読書を満喫♡
step
44日目:活動もほぼ正常となり10時に退院
医療費は月ごとに計算され、今回たまたま1/31入院だったので初日と2日目以降の差が出て分かりやすくなりました。
まずは入院初日(1/31)の領収書と明細書の中身を解説していきます。
1.入院料(包括診療分)
今回は「包括診療分」に区分される入院料の基本部分は、原則「病棟ごと」で異なる計算方法となります。
メモ
*1病棟は、最大60床(一部経過措置的に70床)です。
人員基準や診療面の実績等により区分が定められており、各医療機関が予め厚生局に届出を行います。
大まかにいうと、以下の組み合わせで入院医療費を計算します。
(1)組み合わせー一般論
①出来高部分
全て出来高の「入院基本料」であれば、明細書にある全ての診療行為を個別に積み上げて医療費を計算します。
賢者
7:1、10:1など、看護職員の配置基準で呼ばれる場合が多いです。
②包括部分
検査や投薬など、一部(場合によっては大部分)が入院料に含まれる「特定入院料」が挙げられます。
筆者
種類が沢山あり、それぞれ出来高となる部分が異なるので割愛しますが・・。
それとは別に、一定の要件を満たす急性期病院は届出により「DPC/PDPS」によることもできます。
メモ
*DPC/PDPS=Diagnosis Procedure Combination/Per-Diem Payment System=診断群分類に基づく1日当たり包括払い制度
参考
*「特定入院料」は要件を満たす患者であればどんな病気でも1日当たりの包括部分の金額は同額、DPC/PDPSだと病気により包括部分の金額が異なるイメージです。
今回入院した病院は②の「DPC/PDPS」により医療費を計算しておりました。
それが分かるのが明細書のこの部分です。
【入Ⅰというのは「DPCのⅠ期(入院早期)という意味で、その下の行の「×1.3557」というのは病院ごとに決められている「DPC係数」です。数値は病院により異なりますが、DPC病院だと明細書の表現はこのような形になります。】
「DPC/PDPS」計算方法は以下の組み合わせによります。
(2)組み合わせー今回の場合
①点数部分
診断群によって定められた点数です。
今回、「虫垂切除術 虫垂周囲膿瘍を伴わないもの」というツリーに従い、1日目7,304点、2日~4日目5,655点(1,855点×3日)が「包括評価入院料」に計上されています。
【入院時の病名や手術の有無などにより細かく点数設定がされています。作った人・・神ですね。なお、今回の手術に該当するのは下から3番目(3089)です。】
賢者
筆者
医療機関ごとの診療体制や実績などを係数化されたものです。細かすぎる話なので割愛しますが、色々な診療科があったり入院期間が短かったりすると一般的には係数が高くなります。
女神
1日目は「Ⅰ」、2日目以降は「Ⅱ」となっているのは・・?
Ⅱは「DPC/PDPS」を採用している病院の平均在院日数、Ⅰは平均在院日数の25パーセンタイル値です。
早く退院できると単価が高くなるように設定されています。
なお、「Ⅱ」の期間を超えると「Ⅲ」そして「対象外(出来高)」という形で単価が低くなっていく仕組みです。
関連
*パーセンタイル値とは、全体を100として小さい方から数えて何番目になるのかを示す数値です。今回、ツリー図によるとⅡの期間は入院6日目までなので、その25%は1.5日ですが、25パーセンタイル値は「1日」となっています。在院日数の少ない医療機関から数えて25%が入院期間1日だったという意味ですね。
②出来高部分
手術を中心とした「ドクターフィー」的なものを中心に出来高算定となっております。
筆者
今回入院ではどのような項目が出来高算定となっているのかを解説してみます。
2.出来高部分の各要素
(1)初再診
外来では同じみの「初診料」288点が算定されています。
【色々な区分がありますが順に見てみましょう・・。】
余り知られておりませんが、実は入院でも外来でも初再診料は変わりません。
包括となったり外来患者が入院する場合など、算定できない場合も多いですが・・。
(2)入院料
先ほど解説したDPC/PDPSによる入院料の加算部分です。
【「包括診療分(DPCで計算した部分)」が患者目線でいうところの「入院の基本部分」です。名称からは分かりにくいですが、ここでの「入院料等」は+α的な要素となります。】
主として人員配置や実績により別途届け出をする事で算定可能となります。
①患者サポート体制充実加算(入院初日70点)
相談窓口を設置していること等により算定できます。私の場合は何も相談しておりませんが、あくまで「体制がある」事に対する加算です。
【良く分かりませんが、管理や体制が一定の水準を満たしていそうな雰囲気は伝わりますかね・・。】
②救急医療管理加算1(入院から7日間まで900点/日)
救急病院等が重症患者を受け入れた場合に算定できます。私の場合、緊急手術を要する状態であったため重症患者に該当したと思われます。
(3)医学管理料
①肺血栓塞栓症予防管理料(305点/入院中1回)
手術後、医療用のストッキングを一晩履かせて貰いました。これにより肺血栓塞栓症が予防できるそうです。
【キツめのストッキングを履かされた事による加算です。】
参考
*肺血栓塞栓症とは、下部深部静脈等で形成された血栓が肺に運ばれ肺動脈が閉塞する病態で、手術などによる血液うっ滞がその原因となります。
(4)検査料
明細書を見るとかなりのスペースを占有しておりますが、ここでの料金発生はゼロです。
【真ん中の列に点数がないので・・包括診療料に含まれるという見方になります。】
賢者
受診した際は「また検査・・」という印象もありましたが、病院としては費用持ち出しでやってくれているので「必要な検査だったのであろう・・。」と、納得できます。
(5)画像診(断料)
ここもCTやX線そのものの料金は発生しておらず、「画像診断管理加算」というものが2種類算定されています。
【X線からCTへの流れで、外来でやると・・人によりますが自己負担4千円位にはなるかと思います。】
ⅠはX線、ⅡはCTに対応するもので・・放射線科の常勤医師が配置されている事により算定されるものです。
【管理加算という「体制」への評価は包括されないということですね。】
小さい病院だと放射線技師しかいない場合が殆どなので、大病院ならではの加算なのかも知れません。
(6)投薬料~(8)処置料
ここも料金は発生しておりません。
【知らぬ間に座薬を入れられていたという事実もここから判明します。】
手術後の点滴や薬などで、これも入院料に含まれるという解釈です。
(9)手術
手術については先ほども触れましたので割愛しますが、その他に「超音波凝固切開装置等加算」というものが算定されています。
【個別に点数が記載されていませんが、超音波・・の加算が3,000点だそうです。結構大きいですね。】
これは、超音波の振動熱でたんぱく質を凝固させながら組織を切開するような装置だそうです。
【工具みたいですね。】
賢者
切開と皮膚の凝固を同時に行うので、出血が少なくて済むみたいですね。
(10)麻酔料
素人的には手術の一環で麻酔をするイメージですが、医療費的には手術と麻酔は別にそれぞれ出来高算定となります。
【麻酔時の薬剤は「投薬料」には含まれず、ここに記載されます。色々使用されていますね・・。】
点滴についても、術後のものは入院料に含まれますが、麻酔中のものは麻酔料の区分で記載され出来高算定されます。
本体9,355点に、常勤の麻酔開始が術前後の回診をする事等により算定できる「麻酔管理料Ⅰ」が1,050点プラスされるので、手術16,760点とも大差ない請求点数となっています。
(11)病理診断料
今回は虫垂を切除したので、その組織の中に悪性な要素(がんなど)がない事を診断してくれた・・という事だと思われます。
筆者
付き添ってくれた家内は私の虫垂を見たようですが、私はまだなので・・。
一か月後の外来でそのような説明があるのだと思われます。
Ⅲ.入院2日目~4日目の医療費(B病院)
怒涛の手術当日が過ぎ、翌日からはまったりとした入院生活でした。
その辺が医療費にも著明に表れているので1日目との比較も含めて解説します。
1.入院料(包括診療分)
先ほども触れた通り、1日目7,304点、2日~4日目5,655点(1,855点×3日)が基礎点となっています。
【係数は変わりませんが、点数が1日目から大分減りますね・・。】
女神
実際も、たまに診察を受けつつ、ほとんど寝ているだけだったので点数の妥当性はあるな・・とこの記事を書きながら感心した次第です。
2.出来高部分の各要素
(1)入院料
救急医療管理加算900点×3日は、先ほども解説したとおり入院から7日間算定できるので入院2日目以降も算定されています。
【緊急手術していただいたおかげで楽になったので・・喜んでお支払いしたい部分です。】
今回は緊急入院だったので算定となった訳ですが、予定入院であれば算定されない事になります。
(2)検査・注射
初日と同様、これらは包括診療分に含まれているという解釈になり費用は発生しません。
(3)投薬料
原則は包括診療分に含まれますが、退院時処方は出来高で算定となります。
【痛み止めと胃薬という・・汎用性の高いお薬なのでいくらでも欲しいところです。】
女神
特に持病もないので、頓服の痛み止めと胃薬が(念のため)処方された形です。
筆者
言ってはいけないのでしょうけど・・汎用性があって役に立つお薬たちなので有難いです。
メモ
*結局、術後の経過も良好で1粒も飲んでおりません。
(4)食事負担金
今回、手術翌日の昼から退院日の朝まで6食をいただきました。
【1行だと細すぎるので包括入院料も含めておりますが文脈的には無関係です。手術後の身体に染み渡る食事でした・・。】
筆者
おかゆで300kcal程度のボリュームでしたが、術後の私にはちょうど良く・・味的にもおいしく頂くことができました。
特に、手術翌々日位になると「食事位しか楽しみがない」状態になるので・・「医療機関における食事の重要性」を患者の立場で思い知る機会となりました。
食事療養費は、通常食(糖尿病など特定の疾病がある方以外)であれば1食460円の自己負担額となります。
ちなみに、国への請求額は1食640円となります。
筆者
ここ最近で260⇒360⇒460円、と自己負担額が増加していますね。ただ、個人的には1食460円でも割高感はなかったです・・。
ともあれ、手術後には急速に体力が回復し、無事に退院することができました。
次に、この入院に係る医療費について解説してみます。
Ⅲ.自己負担額
まず、自己負担額決定のプロセスは以下の通りになります。
【結局のところ医療費はいくら・・?という疑問にはこの後の流れで答えます。】
このプロセスに沿って解説を試みます。
1.算定点数及び食事療養費の決定
Ⅱ.で解説した通りですが、結果として今回は以下のような点数となりました。
【点数の合計は 61,638点で、これに10を乗ずると全額自己負担の場合の医療費が算出できます。61万・・フュエ~。】
この点数を基に自己負担分が計算されていきます。
2.保険証に基づき自己負担分の決定
注意ポイント
*ここから先は「70歳未満・年収約370万円~770万円」と仮定して話を進めます(厚生省のスライド例もそうなっていたので・・。)。
(1)負担割合に応じた金額計算
まず、私も当然そうですが今回の事例だと自己負担は「3割」となります。
図中の点数に10円/点と3/10を乗じ、端数を四捨五入すると計算できます。
【3割負担での合計額が184,920円です。痛みがなくなった満足度的には問題ないですが、やはり手痛い出費ではありますね。】
参考
*上記とは別に、病院Bでの食事代が460円/食×6食=2,760円かかります。
この後の展開もあるので「月ごとの自己負担額(食事療養費除く)」で記載しています。
(2)高額療養費制度
名前は聞いたことのある方が多いと思われますが、入院費は自己負担額が数十万円以上と高額になりがちなので、支払額に上限が設けられています。
ポイントは、
月毎の医療費に対して上限がある。
複数の病院での自己負担額は合算できる。
所得に応じて上限が異なる。
です。70歳未満の場合での高額療養費自己負担額を貼っておきます。
【所得が多いほどに医療費の負担は大きくなります。】
今回の自己負担額に対する上限額は以下のとおりとなります。
【1月入院分の73,630円が戻ってくる計算となります。ありがたや~。】
この場合、運悪く(?)月を跨いでしまったので、2月は別に上限が設定されます。
予定入院であれば・・月内に入退院ができるようにするのが自己負担額削減のコツかもですね。
3.人によっては更に補助が・・。
事前又は事後の申請により高額療養費限度額を超えた部分は自己負担しなくて済むのですが、人によっては更に負担が軽減します。
(1)健康保険による補助
私(の職場)が加入する健康保険組合では「高額療養費を超えた自己負担額の軽減措置」が取られていました。
具体的には「月35,000円を超える部分は医療費補助の対象となる。」というものでした。
【高額療養費(上限80,100円のやつ)の申請をしようとしたら・・更なる優遇措置の存在を知ります。一般的に資金のある健保組合にしかこういった措置はないと思われるので・・寄らば大樹(大企業)の影という感じでしょうか。】
参考
*加入している健康保険により補助の有無・内容は異なります。
この時点での自己負担額は、
はてな
①1月分=35,000円
②2月分=31,190円+食事療養費2,760円=33,950円
③①+②=68,950円
となりました。
(2)医療保険の給付
いわゆる民間の保険です。
私は某共済(月額4,000円程度)に加入しており、そこでの給付内容は「入院1日目から日額9,000円の給付」でした。
今回、合算して4泊5日なので、9,000円×5日=45,000円が給付となりました。
筆者
保険者の補助(高額療養費他)は数か月かかるのが通例ですが、民間の保険は1週間以内に給付となりました。
Ⅳ 結論
最終的な自己負担額を健康保険適用前(自費)から並べてみました。
【予期せぬ入院というアクシデントに対し、高額療養費制度までを含めた健康保険制度(適用後の自己負担金額は114,050円)はとても機能しているという印象でした。】
筆者
これによると、自己負担率は3.9%という事で・・各種補助の有難みを改めて痛感しました。
参考
*病気や保険の内容によって最終的な自己負担率は相当変わります。
なお、最終的な自己負担額については「医療費控除」の適用対象となり、一定額(多くの人は10万円)を超える部分は所得控除の対象となります。
筆者
女神
・・地味に・・少しだけ税理士っぽいこと言いましたね。
少ない自己負担で良い医療を受けることができ、手術後の経過は手術前よりむしろ改善したのではないかという位に体調が良いです。
一方で、今回の入院で家族や職場には少なからず迷惑をかけたので・・。
筆者
万全の保険制度に甘んじて健康をおろそかにせず、体調管理と人生を両立させられるよう活動を再開します!
メモ
*長くなりましたが「医療については真面目」をモットーにしたいので・・ご容赦と今後のお付き合いのほどよろしくお願いします。
ポイント
まとめ
・入院は月内に入退院する方が自己負担額は少なくなりがち。
・明細書の内容は理解すると面白い面もあるが、自己負担額は保険者等による上限に依存することが多い(よって、明細書の内容を理解しても暮らしのヒントは浮かんでこない。)。
・高額療養費制度や保険者の補助までを理解したうえで医療保険の加入内容を検討するべき(過剰な医療保険に加入しないために。)。
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