真面目でくだけた医療とか税のお話

医療な人たちと特定支出控除 ~どんな制度か、どの程度節税になるのかを解説してみる~

注意ポイント

勤務医の節税策「特定支出控除」について今さらながら考察してみます。

 

 

こんな方におすすめ

  • 勤務医で節税に興味のある方
  • 開業はまだだけど何かできる事はないか・・と探している方
  • 特定支出控除の内容について知りたい方

 

医療に特化した税理士を標榜している割に「医療の話も税の話もない」という課題をもつ当ブログです。

 

女神
・・致命的・・。

 

根本的な課題を少しずつでも克服するため、仕事で遭遇した論点を中心に「医療とか税金とかのお話」を増やしていこうと思います。

 

今回は(今さらながら)医療業界でもたまに話題となる「特定支出控除」のお話です。

 

Contents

1.特定支出控除とは

参考

*給与所得者が特定支出をした場合、その金額が基準となる金額を超えるときは、確定申告によりその超える部分の金額を給与所得控除後の所得金額から差し引くことができる制度です。

国税庁HPより要約抜粋

国税庁HP

 

これだけでは意味が全く分からないので個別に解説を加えてみます。

 

(1)給与所得者

簡単に言うと「会社から給与をもらっている人」です。

 

今回紹介する「特定支出控除」の対象は「医師」でもなく「勤務医」でもなく「給与所得者」です。

 

よって、本来は医療業界だけの話ではないですが、勤務医で良く適用されることから「勤務医の節税策」として紹介されることがあります。

 

(2)特定支出

原文は上記の国税庁HPに記載されていますが、要約すると以下の支出です。

①通勤費 ②職務上の旅費 ③研修費

➃転居費 ⑤資格取得費

⑥(単身赴任時などの)帰宅旅費

⑦勤務必要経費(本代や交際費などで上限年65万円)

 

勤務医だとこれらの費用が高くなりがちで、かつ給与自体も高い(節税効果も高い)ことから使用するケースが他職種より多いのだと思います。

 

(3)基準となる金額

基準は「給与所得控除額の2分の1」です。

 

給与所得控除

【右側の金額の2分の1を超えた金額が控除の対象となります】

 

筆者
給与収入の多い方の方が基準金額も高くなるので、基準金額の面では勤務医は不利とも言えますね。

 

(4)確定申告

特定支出控除を受けるためには確定申告が必要です。

 

確定申告では「特定支出に関する明細書」「給与の支払者の証明書」を添付する必要があります。

 

筆者
給与の支払者、つまり会社の証明が必要だというのも一つのハードルですね。

 

医療業界の場合、この特定支出控除の知名度が他の業界よりは高いのも利用されるケースが多い一つの理由だと思われます。

 

2.事例をもとに節税額を計算してみる

メモ

*復興特別所得税は額が細かいので省略します。結論が分かれば良い方は事例を見たあと3.に飛んでください。

 

こんな事例をもとに節税額を計算してみます

勤務医:

年収3,000万円、社会保険料230万円、扶養家族なし

特定支出・・領収書を集めるだけ集めて140万円

 

(1)特定支出控除を適用しない場合

①給与所得控除額

給与収入から控除できる「概算経費」部分の金額です。

 

年収3,000万円の場合、上限額の195万円となります。

 

②給与所得

給与収入3,000万円―給与所得控除額195万円=2,805万円となります。

 

③所得控除額

社会保険料は230万円とします。

 

なお、庶民である我々にはなじみの深い基礎控除は合計所得2,500万円超なので0円となります。

 

➃課税所得金額

2,805万円―230万円=2,575万円

 

⑤所得税額

2,575万円×40%―279.6万円≒750.4万円

 

(2)特定支出控除を適用すると

①給与所得控除額、②給与所得

(1)と同じ

 

②‘特定支出控除額

140万円―195万円÷2=42.5万円

 

②‘’特定支出控除後の給与所得

2,805万円―42.5万円≒2,763万円

 

③所得控除額

(1)と同じ

 

➃課税所得金額

2,763万円―230万円=2,533万円

 

⑤所得税額

2,533万円×40%―279.6万円≒733.6万円

 

3.結論

(1)と(2)の差額

750.4万円―733.6万円=16.8万円

 

ということで、簡便計算ではありますが所得税を16.8万円を節税できることになります。

 

筆者
住民税を課税所得金額の約10%とすると・・そちらでも(2,575万円―2,533万円)×10%=4.2万円程度は節税になります。

 

賢者
あわせて20万円程度・・どうなんでしょう?

 

140万円の支出額、集計や申告の手間を考えると決して効率は良くないのかも知れません。

 

ただ、支出額の一部でも取り戻せる制度なので、条件に合う方は是非適用を検討すべきと考えます。

 

なお、集計が面倒だという理由で税理士などに申告を依頼するケースもあるかと思います。

 

仮に申告料として15万円かかるとすると・・。

 

女神
税理士費用は「特定支出」に入りますか?

 

筆者
・・うん、入りませんね。

 

女神
・・。

 

注意ポイント

*対象者の収入、特定支出の額などにより効果は違ってきますのでご注意ください。

 

4.勤務医が他に検討したい節税策

(1)開業する *節税目的の開業を勧めるものではありません。

クリニックを開業すれば個人事業主となり、事業に関して使用した費用は全て必要経費として計上できます。

 

筆者
開業には縛りもあって、勤務医の状態で開業するのは難しいので一長一短ですが・・。

 

勤務医の傍らできるような仕事を見つけて個人事業主になることも場合によっては可能です。

 

女神
例えば・・Youtuberとか・・?

 

事業に使用した経費を計上できるほか、いくつかのメリットを享受することができます。

 

メモ

*これはまた別の機会に解説を試みます。

 

(2)iDeCo(イデコ)

確定拠出型年金といわれるもので、毎月決まった掛け金を支払って金融商品に投資します。

 

筆者
支払った金額は全額所得から控除できます。

 

その上、退職金又は年金という形で受け取るので受取の際にも税金上有利です。

 

筆者
利息や運用益も非課税ですね。

 

それでも運用損となるリスクはあるので注意は必要です。

 

(3)ふるさと納税

コマーシャルなどでも一般的になった「ふるさと納税」も節税策として一般的です。

 

ふるさと納税は、限度額の範囲内で支払えば、実質2,000円で返礼品がもらえるという制度です。

 

筆者
節税というより・・税金の一部を寄付金という形で先払いするとオマケ(返戻品)がもらえる、という理解が正しいかなと思います。

 

税金を節約できるという意味での節税にはなりませんが、お得に税金を支払えるという意味では活用したい制度ですね。

 

~*~*~

 

一般的に、勤務医など収入が大きい方ほど「節税」などの工夫の余地も大きくなると思われます。

 

是非一度ご自分ができそうな節税策についてご検討いただければ幸いです。

 

筆者
私も医療に特化した税理士として、皆様のお役に立てる機会があればうれしく思います。

 

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